こんにちは アン 〜Before Green Gables

#6『希望は生まれる』

ボーリングブロークが秋の気配に包まれた頃、エリーザはロジャーに結婚を申し込まれました。

バート「お前が、どれだけこの家を恨んできたか、よく判っている。もしお前がアンのために結婚をやめてこの家に残ったら、お前は毎日後悔するだろう。ジョアンナやアンを恨むようになるだろう。そして、この家をボロクズのようにしてきた俺を、今よりもっと憎むようになるだろう。お前の人生は、お前のものだ。ロジャーと結婚して、この家を出て行け。」
エリーザ、泣いて「ごめんなさい、アン。」と言う。アン、ショック。
バート「アンは生きていくさ。あいつには強い所がある。ひょっとするとジョアンナよりもしっかりしているかも知れねぇ。俺は、ホーレスやエドワードを見てるといらいらするが、アンには腹を立てたことがねぇ。お前がこの家を出て行くとき、アンに言え。これから、困ったことがあったら、時々、この納屋に来てもいいってな。さあ、もう行け。」
エリーザ、バートの背中に擦り寄って「ありがとう、お父さん。」
エリーザ「私は今まで、お父さんのこと、知らなかったのね。」
アン、泣きながら夜の森を駆ける。
ジョアンナ、おなかが張って眠れない。
エリーザ、アンが森から帰ってきたのを見つけるが、ショックのためにエリーザと口を利かない。
アン、エリーザのために荷物を詰める。
アンに謝るエリーザ。
黙々と仕事をするアン。一言もしゃべらない。アンが黙ってるなんてへんてこ。
アンが心配なエリーザ。
エリーザを迎えにロジャーの馬車が来た。
アン(恋って、きっとメレンゲパイやアイスクリームよりも甘いお菓子なのね。あたし、もし大人になっても、恋なんかしないわ。)
アン、3つの時にジョアンナに叱られて翌朝まで屋根から下りてこなかったくらい頑固な所がある。
ロジャー、ロンドン行きのきっぷがとれた。出発は来月の3日。結婚式を挙げるとしたら来週。
アンが来てくれない結婚式が考えられないエリーザ。
これから牧師の所に行くというロジャー。結婚式は必要ない、2人だけで誓いを立てるだけで十分だと言うロジャー。

そして、とうとう、エリーザとロジャーが、ロンドンに向かって旅立つ日が来ました。

アン、旅立とうとするエリーザの様子を伺っている。
ジョアンナのおなか大きくなった。もう生まれるはずの日を10日も過ぎている。
エリーザ、一目見てから行けると思ったが、結局赤ちゃんを見れなかった。
ジョアンナ「今度会えるのは、ずいぶん先だわ。」
ホーレス、エドワード、ハリーにお別れを言うエリーザ。
アンにお別れを言おうと探すが、結局アンに会えなかったエリーザ。
机の影にアンが隠れているとも知らず、アンのベッドの上でお別れの言葉を言うエリーザ。「アン…。この部屋で一緒に眠ったわね。いろんなおしゃべりをしたわ。お父さんやお母さんに内緒のことも。本当に楽しかった。赤ん坊の時、初めて抱っこした時から、好きだった…。さようなら、アン。」
アン、結局エリーザと一言も話せなかった。
バートまで見送りに来た。
アンにロンドンから手紙を書こうというロジャー。読んでくれるまで書き続けようという。
アン、机の下で涙を流してエリーザの後を追うが、結局追いつけなかった。
赤ん坊が生まれると言ってアンを呼びに来たホーレス。バートはお産婆さんを呼びに行った。
ジョアンナの傍で何もできないエドワード。ハリーは泣くだけ。
こんなに痛いのは初めてというジョアンナ。
ジョアンナにたくさんのお湯とタオルを用意するように言われてその通りにするアン。
アンがしゃべったのでビックリするホーレスとエドワード。
アン「赤ちゃんを産むときは痛いって聞いたことがあるわ。でも、あんなに痛いなんて知らなかった。ハリーは私が朝起きたら、もう生まれていて、おばさんはケロッとしていたんだもの。あたしもいつか、子供を生むのかしら。あんなに痛いのかしら。なんだか怖いわ。」
ジョアンナの悲鳴に怖くなるアン。
部屋をのぞいている男衆を見つけて扉を閉めるアン。
ホーレス「か、母ちゃん死んじゃうの?」エドワード「母ちゃん…。」アン「死ぬわけないでしょ!あ、でも、お産で死んだ人がいるって聞いたことある。おじさん、早くお産婆さんを連れてきて。」
バート、お産婆さんの屋敷の入り口で帰ってくるのを待っていた。帰ってきたお産婆さんに怒るバート。
産まれるといいながらアンの手を握るジョアンナ。痛がるアン。
赤ちゃんが出てきたけど顔が真っ青。赤ん坊のお尻を強く叩くように言われるアン。アン、なんとかやってみる。
家の前に来て、お産婆さんを抱えて走るバート。赤ん坊の声にびっくりしてお産婆さん落としちゃったw
男の子が生まれた。アン、泣きながら「生きてるの?赤ちゃんは生きてるの?」。
ジョアンナ「家族が一人、家を出て行った日に産まれてくるなんて、何て日なんだろう。」

トーマス家に、新しい家族が増えたのです。

バート、アンに名前をつけるように言う。
アン、なかなか思いつかない。
戸棚のガラスに映る泣き顔の自分を見て「あなたは、だあれ?」というアン。

ガラスの向こうに、もう一人の女の子が映っていました。
まるで、アンの話を聞きたがっているように、首を傾げていました。

アン「聞いてくれる?私の話。私ね、エリーザが出て行って、暗闇の底に沈んでしまったような気がしたの。もう私に本を読んでくれる人はいない。寝る前に、私のお話を聞いてくれる人はいない。息も出来なくなって、世界中が水の底に沈んでしまったような気がしたわ。でもね、赤ん坊が産まれて、あの子の鳴き声を聞いていたら、心の中に何かが生まれてきたの。まるで、方舟に乗ったノアみたいな気持ちだった。世界中が海の下に沈んで、命という命が消えてしまったけれど、ノアは、鳩がオリーブの葉っぱをくわえて戻ってきたのを見て思ったの。ああ、この世界に大地が生まれたんだ。もう一度希望が生まれたんだ。だから、そうよ、赤ちゃんの名前は、ノアよ。」
アン、赤ちゃんの名前は、ノアにすることに。

静かな寝息を立てるアンの胸には、新しい希望が宿っていました。