精霊の守り人

視聴一日遅れ。

第八話 刀鍛冶

朝早くから槍の鍛錬をしているバルサ。
顔を洗って朝ご飯を食べ終わってから鍛冶屋に槍を見てもらいに行く予定。
鍛冶屋がたくさん。
ヨゴの鉄はロタやサンガル、それにカンダル(バルサの故郷)にまでその名が知れ渡っている。
ヨゴ鉄が交易品としてとても重要だということは教わっていたけど、実際に鉄を溶かしたり打ったりしているところはあまり見るものではないと言われていたチャグム。
ヨゴの貴族の間には、刀を打つところを見た武人は強くなれないという言い伝えがあった。
バルサ、子供の頃から、真っ赤に焼けた鉄や飛び散る火花なんかを見るのが大好きだった。
チャグム、まだ町の子供みたいにしゃべれないので、鍛冶屋の中に入ったら口を聞かずに見ているようにバルサに言われる。
鍛冶屋の人と面識があるバルサ。
新しい槍を打つしかないらしい。
急いで一振りお願いするバルサ。
鍛冶屋、街で噂されていることが真実とは思いたくないが、宮に弓をひいたということが本当ならば、宮中に剣を納めるものとしてバルサに味方することができないという。
バルサ、宮に弓をひいたというのは本当と言う。
鍛冶屋、そうならば、バルサが生きていることを宮に伝えなければならないと言う。
バルサは頑固だけど、鍛冶屋はそれ以上に頑固。
つい口を出してしまうチャグム。
もうすぐ別の客が出来上がった刀を取りにくることになっている。どうしても動かないというのならせめて隣の部屋に移っていてくれないか、という鍛冶屋。
鍛冶屋、双方から話を伺ってみることにする、と言う。
隣の部屋の扉についたてを立てて開かなくする鍛冶屋。
バルサの刺客だった二人が入ってきた。
刺客の二人が注文した刀は、バルサがいる部屋にかかっていた。
刀を手にして緊張が走るバルサとチャグム。
刀を見てもらう前に二人に聞きたいことがあると言う鍛冶屋。
「ヨゴ刀の良さとは一体なんでしょうか?」
有り体に言えば、ヨゴ刀は、折れにくさと切れ味という、本来なら矛盾しあう二つの性質を両立することに成功した、世界にまれなる刀剣。さらに言えば、その形状、重量、寸法、そり、その全てが、1000年をかけ洗練され、すでに使い手のために完結されている。
鍛冶屋、他国において刀剣はただ人を傷つけ殺すための道具としてしか考えられていないが、ヨゴでは武人と鍛冶が互いの信頼に基づいて刀を作りそして使うという伝統があり、そこに究極の名刀が生まれる余地がある。人を切らず、ただ人の業だけを断ち切る、これこそが鍛冶屋が考える究極の名刀。いつの日かそのような一振りを打ちたいと常々考えている。
鍛冶屋、人を選んで刀を打たざろう得ない。
24年前、あちこちの国を旅していた遠い異国の武人がおり、風貌に不似合いな子供を一人絶えずそばに連れていた。宮廷内の抗争に巻き込まれた友人の子供を託されていた。武人はそのことが原因で国を追われることになり、武人を追って何人もの刺客が放たれた。刺客と戦うために一振りの刀を打ってほしいと鍛冶屋に頼んできた。はじめは断ったが、刺客がどのような者達か聞いて気が変わった。送り込まれてきたのは、全て武人と苦楽を共にしてきた友人達だった。武人は子供を守りながら、かつての親友を自らの手で殺さなければならなかった。話を聞いて、この方に究極の名刀を打って過酷な運命をかかえている業を断ち切ってほしいと思い特別な思いを込めて一振りの刀を打った。その武人は結局友人達を全部切ってしまった。その武人は今はもうこの世にはいない。死ぬ間際まで自分のした行為に苦しみながらこの世を去った。子供は大人になるまで武人が大切に育て上げ今も元気に暮らしている。
刺客、偶然ながらその武人によく似た人物を一人知っている。自分に一切関わりがない人の子をある日突然託されて追っ手から逃げ、一度は奪い返されたその子を、自らの命を危険にさらしながら取り返していった。自分を殺そうと迫り来る幾人もの追っ手をただの一人として殺さなかった。その者がなぜ人の子供を預かる気になったのかその心持は察するべくも無いが、目の前で散り行こうとしているか弱い命を黙って見過ごすことが出来なかっただけなのかもしれない。
鍛冶屋、実に興味深い話だと言う。
刺客、残念だがつい先日この世を去ってしまったと言う。その者ならば鍛冶屋の言う究極の名刀を手にする資格があったのかもしれないと言う。
鍛冶屋、自らバルサのいた部屋に入り、刀を手に取り刺客の二人に手渡す。バルサとチャグム、物陰に隠れて助かる。
刺客、槍を見つけて先客が来ていたのではと聞く。
帰る刺客。
バルサ、悪運が尽きたかと思った。
双方から話は聞いたので、7日後にまた来るようにバルサに言う鍛冶屋。
槍が戻ってきた。