こんにちは アン 〜Before Green Gables

#25『雪よりも冷たく』

クリスマスの朝、バートは街へ向かいました。

ジョアンナ、アンから、バートが仕事を見つけて戻ると聞く。
ジョアンナ「今まで、あの人が言ったことが本当になったことなんてなかった。でも、今までとは違う暮らしが始まるのかもしれない。」
クリスマスの飾りとしてもみの木の上に飾っていた星が落ちているのを見つけたノア。
列車が止まっていると報告を受けたバートの元上司。事故があったようだが詳しい状況が分からない。
夜になった。エドワード「父ちゃんったらやっぱり夕ご飯までに戻ってこなかったな。」ジョアンナ「仕事が見つからなくて意地んなってんだよ。けど、クリスマスにそう簡単に仕事が見つかるもんか。」
ジョアンナに言われてみんなを寝かせるアン。
帰りが遅いバートの心配をするジョアンナ。
家の戸を叩く音が。「バート?」「トーマスさん、トーマスの奥さん。」
ジョアンナが扉を開けると、鉄道会社の人だった。「私を覚えているかね?」「あ、ええ、鉄道会社の。」「入っていいかね?」「どうぞ。」
「悪い知らせがある。」「バートが、何かしたんですか?」「いいや、そうじゃない。今朝方、事故があったんだ。」「事故?」「落ち着いて、聞いてほしい。バート・トーマスは、列車に轢かれて、亡くなった。私も、先ほど確認したばかりだ。一緒に来てもらえるかね?バートが運ばれたところへ。お、奥さん。大丈夫かね。」「…そんな…バートが…」「しっかりしなさい。葬儀まで、いろいろやらなければならんだろう。誰か、奥さんを支えてくれる人がいるかね?もしいないようだったら、私の女房を手伝いによこす。」「いい、いいえ、います。アンがいます。」「そうか。では、来てくれ。」
夜が白んでくる中、馬車に乗って鉄道会社の人といるジョアンナ。
小鳥のさえずりに目を覚ますアン。台所に行くとジョアンナが。
アン「おばさん、おはよう。おじさんは?」
ボーっとしているジョアンナに気づくアン。
アン「おばさん?」ジョアンナ「バートが…死んだ…。」アン「え?」ジョアンナ「バートが死んだんだ。列車に轢かれて。夜中に会いに行ったよ。あの人、雪よりも冷たくて。」
その場で机をつかんで震えるアン。
ハリーがおねしょした。エドワードのシーツまでびしょびしょ。
ホーレス「早く取り替えてやってよ。おい、アン!」アン「バ、バートおじさんが…亡くなったの。」ホーレス「な、何言ってんだよ、アンは?なぁ、母ちゃん?」ジョアンナ「明日はお葬式だから、喪服を出しておかなくちゃ…。」ホーレス「母ちゃん…。」エドワード「何?何?どうしたの?」ジョアンナ「親戚に電報を打たなけりゃいけないし、大勢この家に来るから、用意をしないと…。あ、それより朝ごはんが先だね…。しなくちゃならないことがたくさんだ…。」
立ち上がったジョアンナ、その場に崩れる。
ひざを抱えてなくホーレス。元気がないエドワードとハリー。
ベッドに伏すジョアンナ。そばにいるアン「信じられない。おじさんがそんなこと。」ジョアンナ「アン、助けて。お前だけが頼りだ。」アン「何をすればいいの?私、何をすればいいの?」ジョアンナ「あの子達に、ご飯を食べさせてやって。それから、喪服の準備と、電報。」アン「電報?親戚に知らせるのね。」ジョアンナ「住所は、親戚から来た手紙のどこかにあるはずだから。」アン「解ったわ。おばさんは休んでいて。」
目玉焼きを作って食卓の準備をするアン。その後、喪服を探すアン。その前に電報が先。
ホーレスにノアが起きてきたら朝ごはんを食べさせるように言うアン。まだ泣いているホーレス。
アン「私は街へ行くわ。お葬式を知らせる電報を出すの。」ホーレス「葬式なんて言うな!父ちゃんの葬式なんて…いやだ…いやだ…。」
ホーレスにつられて泣き出すエドワードとハリー。
アン「弱虫!男の子のくせに。このうちで一番大きな男の子のくせに!あんたが泣くから弟が泣くのよ!」ホーレス「なんだって…。」アン「しっかりしないと、おじさんに笑われるわ。」ホーレス「お前に俺の気持ちが解るか!父ちゃんが死んだんだぞ!お前は自分の父ちゃんじゃないから解んないんだ!」アン「…あたしだって泣きたいわ。座り込んで泣きたいわ!でも…あたしは泣かない!」
家を出るアン「泣いたらダメ。あたしが泣いたらダメ!」
雪につまずいて雪道に伏すアン。泣いてしまう。
馬車で通りかかったランドルフ親子。アンの腕を抱えあげるランドルフ
バートのことを聞いて、トーマス家のことが心配になって来たというランドルフの父親。手伝えることがあるか聞くランドルフ。アンから電報のことを聞き、代わりに打ってくるというランドルフの父親。
ランドルフ「がんばれよ、アン。ミルドレッドもマイケルもみんな、お前のことを応援しているからな!」
家に戻るアン。ノアがクマのぬいぐるみを持って玄関に座っている。
アン「ノア…。どうしたの?」ノア「お父さん、帰ってきたー?」「お星様つけてもらうの。」アン「あのね、ノア。」ノア「いつ帰ってくるの?」アン「え?…分からない。」
クマの名前をつけてくれるというバートの約束を思い出すアン。アン「ねえ、おじさん。クマちゃんの名前は?おじさん、なんて名前をつけてくれたの?教えて…。ねえ、教えておじさん。」
泣き出すアンとつられて泣き出すノア。ノアを抱えて一緒に泣くアン。
ホーレス「俺は弱虫じゃない。これから、父ちゃんがしてたことを俺がやるんだ。馬の世話も、屋根の修理も、薪割りも。」
薪割りを始めるホーレス。うまくできない。
ホーレス「くっそー!どうして父ちゃんみたいにできないんだ!」
ホーレス「この斧、おとといまで、父ちゃんが握ってたんだ…。」
バートの薪割りを思い出すホーレス。
バートがノバスコシア一の踊り手だったと聞いていたホーレス。
バート「ホーレス、よく覚えておけ。アンには家族がいない。俺達がいなければ、一人ぼっちなんだ。これからは、母ちゃんとちび達とアンを守って生きよう。なぁ、ホーレス。」
ホーレス「アン。」アン「何?」ホーレス「これからは、俺が母ちゃんとちび達と、お前を守る。守るんだ!」
鉄道会社の社長、鉄道の駅の一室にいるジェフリーのところへ。
社長「バート・トーマスを覚えているか?」ジェフリー「無論だ。最後に会った時からもう2年経つ。俺が捕まってせいせいしてるだろう。だがな、今度会っても言ってやるぜ。俺はお前を騙したことを後悔しちゃあいねえ。騙されたお前が負け犬なんだってな。」社長「バートは死んだよ。」ジェフリー「え?」社長「昨日、列車にはねられたんだ。」ジェフリー「…。へん、あいつらしい死に方じゃねえか。どこまでもみじめな…。」
涙を流すジェフリー。ジェフリー「どこまでも不器用で、天から見放された不幸な男だ。」社長「不幸だったかどうか、お前に判断する資格は無い。お前が一度も手にしたことの無い幸せを、バートは持っていたかも知れない。バートには家族がいた。」
教会でバートに最後のお別れをするトーマス家。
ジョアンナ「あんた…。ちょっと出て行っただけなんでしょう?ケンカして帰ってこなかったことなんか、いくらでもあったじゃない。腹が立って、悔しくて、何日も待って。あんた、いつだって何もなかったふりして、ふらりと戻ってきたじゃない。今度だって帰ってくるんでしょう、家へ。帰ってこなきゃ許さないよ!今度こそ、幸せになれると思ったのに…。」
アン(おじさん…。おじさんは生きているとき、いつももがいていたわ。いろいろな失敗をして、たくさんのものを無くしたって言ってたわ。でも、今はとても幸せそう。たくさんのものを無くしたから、今は世界で一番幸せになったんだわ。)
「天国へ持っていくといい。誇りと、名誉を。」と、バートから買ったトロフィーとシューズをジョアンナとホーレスに渡すランドルフの父親。
ジョアンナ「あんた…。ダンス大会で、優勝した時みたいよ。」ホーレス「これで、天国でもダンスを踊れるね。」
クリスマスの星の飾りを棺に入れるノア。
ランドルフの父親「バート・トーマス…。長い間、ろくでなしだった。財産も、地位も無い、貧しい一生だった。だが最後は、一家の父親として、死んだんだ。」
バートの棺が埋められた墓。"IN MEMORY OF" "BERT THOMAS" "AGED 45 YRS."
花を手向けるノア。アンがそばに。
老夫婦が話しているのを耳にするアン。老婦人「ジョアンナがあんなに参ってるんですもの。もう私達と暮らすしかないでしょう。」

それは、ジョアンナの両親でした。

老婦人「四人の男の子と一緒に、うちへ越してくるように言いましょう。」老紳士「あの子はどうする?ほら、孤児の。」老婦人「あの赤毛の女の子ね。気の毒だけど、孤児院へやるほかないでしょうね。」

新たな運命が、アンを待ちうけようとしていました。


…そういえば、エリーザは結局バートの葬式にも姿を見せなかったな。