獣の奏者エリン

第43話 獣ノ医術師

わが身を汚しながらも、闘蛇という武力でリョザ真王国を守り続けてきた、勇猛な大公と、その闘蛇をも食らう、輝ける獣、王獣を従えた、民の心の拠り所である清らかなる真王。この2つの存在が、大公領民と真王領民との間に、ゆがんだ黒い渦を生み出し、1人の少女を巻き込もうとしていたのでした。

雷の音に目が覚めるリラン。
キリク、ダミヤの言葉を思い出す。「ワジャクの商人の富と大公の武力の前に、真王陛下の権威は日に日に落ちている。この国は真王陛下のもと、清らかに生きる者のためにあるべきなのだ。ゆがみは正されねばならぬ。そのためには、時には毒も必要なのだ。そなたならば分かるだろう?キリク。」
リラン一家を王獣舎の外に出すエリン。
ハルミヤの前で語ったことを思い出すエリン。
山リンゴの接ぎ木の仕方を学童達に教えるエリン。
シロンの問いかけに一瞬ボーっとするエリン。
カザルムに早馬が。真王陛下の使者がリランを連れにやってきた。
エサルの案内でリランのところに案内されるオウリと部下2名。
音なし笛を吹こうとする使者を止めるエリン。
セィミヤの命令で、リランとエリンが王都に呼ばれることになった。
辞退するエリン。
うなり声を上げるリラン。
音なし笛を吹こうとする部下を止めるエリン。
部下1名がリランに食われた。
続いて逃げた部下までやられそうに。
リランを止めに入るエリン。
危険を感じ音なし笛を吹くエリン。エリンの目から涙が。
硬直して倒れているリラン。その場に倒れるエリン。エリンの周りには血が。
ダミヤの看病を受けるエリン。
キリク、これで本当にいいのか悩み始める。(これで本当にいいんだろうか。カゴの鳥は外へは出られない。ただ自然のままに王獣のことだけ考えて、ひたむきに生きようとしているエリンこそ、清らかな者じゃないのか?それを僕は、閉じ込めようとしている。)
エリン、ソヨンの夢を見る。リランを音なし笛で縛ってしまったことを悔いている。
エリン、目覚めるとそばにエサル先生が。
エリン、左手の中指、薬指、小指がリランに食いちぎられて無くなっていた。ショックを受けるエリン。
やってきた王獣使い達は、幼獣だったリランを真王陛下の御前に引き出した男達だった。そのためにリランが興奮してしまった。
真王の命令でなければエリンをリランから引き離すことができるのにというエサル先生。
エリン「音なし笛を吹いた人間に王獣は決して慣れることはない。リランはもう音なし笛を使わないで静めることはできないかもしれない。それでも私はリランの世話を途中で投げ出したくない。音なし笛を使っても私はリランと一緒に…生きます。」エサル先生「それはとてもつらい道よ。あなたが最も嫌っていることをリランにしなければならないのだから。」エリン「覚悟しています。」エサル先生「そうね。あなたはそういう道を行く人なのでしょうね。なぜそんな生き方をと思う人もいるでしょうけれど。自分の思いにまっすぐなあなたの生き方…、私は、好きよ。」
涙を浮かべながらエリンに左手用の手袋を渡すエサル先生。エサル先生の胸で泣くエリン。

エリンは、立ち上がれるようになるとすぐに、手当てを受けている男を見舞いました。
真王から賜った報奨金の全てを男に渡し謝罪するエリンでしたが、男達はわびの言葉を聞き流し、恨みの表情を浮かべるだけでした。

エリンが来てもリランはうなるように。
音なし笛を見せておとなしくさせるエリン。
なんとかリランを外に出すことに成功したエリン。
エリン(私は獣ノ医術師。獣を育て、迷いながら、苦しみながら、獣と共に生きる。お母さんのように。)
左手にソヨンの腕輪をはめるエリン。

数日後、リランを運ぶための王獣用の荷車が王都からやって来ました。
リランたちには眠り薬が与えられ、昏睡している間に荷車に乗せられました。

キリク先生とエリンは王宮からの命令で一緒にラザルに。ヌックとモックが馬車を運転して、キリクとエリンとオウリが荷台に。
エサル先生にももうどうすることができない。カザルムから行く末を見守ることしかできない。

あらがうことのできない大きな力を前にして、エリンは改めて思うのでした。
最後まで、強く生きようと。