獣の奏者エリン

第24話 嘆きの歌

どこかの戦場。

リョザ神王国の国境では、大公軍と、隣国の騎馬の民ラーザとの戦いが、もう何年もの間、幾度となく繰り返されていました。
終わりの見えない、長い長い争いに、大公領の兵士達は、ひどく疲れていました。
国を守っているというのに、真王領民からは、軽蔑された扱いを受けていることに、不満を持っていたのでした。

エリン、王獣舎のわらで寝てしまい、トムラ先輩に起こされて寝ぼける。
トムラ先輩「まったく。いくらリランの世話を続ける許しが出たといっても、食事と睡眠くらいはちゃんと取れ。寝言言いながら腹を鳴らすなんて、嫁入り前の娘がすることじゃないぞ。」に対して、エリン「トムラ先輩って時々年寄りみたい。」
いつもはユーヤンが差し入れるのに、今日はトムラ先輩が作った。
大公軍、ラーザ軍ともに犠牲が出ている。必要な医術師は真王領から城に送られることになっていると聞いて、戦場にではなく城にか、と思い悩む大公。
戦場に出ているシュナン。戦場に出たいと父に申し出るヌガン。戦のことはシュナンに任せている、お前に戦はまだ早い、と一蹴される。苦虫をかみ締めるような表情をするヌガン。
戻ってきたシュナン。ヌガンが稽古しているのに遭遇。シュナンが言うには、ヌガンは大公領一の強力の持ち主。
シュナンとヌガン、小さい頃に一緒に植樹していた。ヌガンは兄の行く道を一緒に歩んでいき、一緒にこの国を守って行こうと誓い合った。
シュナンにとって、ヌガンが強くなったことは、百の闘蛇よりも心強い。
医術師を大公の城に送る命令を出したのはダミヤだった。花も贈るように伝えていた。
サイガムルのことを気にかけるダミヤ。
ダミヤ「力のあるものが王となるべきだとサイガムルは考えているのだ。戦いを嫌う心清いものが国の王であることの大切さが、解らないのだよ。サイガムルはあろうことか、先代の真王を殺した。真王陛下をお守りするセザンはいるが、それだけでは足りないんだ。」「花が美しく咲き続けるためには、庭自体を美しく守らなければいけないのだからね。」
怪我をした兵士がたくさんいる状況に心を痛めるシュナン。
王宮からの使者がシュナンに謁見。
王宮から戦士たちに花が届いたことに、眉をひそめるも、感謝の意を示すシュナン。
戦場に戻りたくないと暴れる兵士が。
雨が降ってきた。帰る王宮からの使者。
花がたくさん馬車の荷台に積まれて送られてきたのを、兵士の一人が狂ったように散らかす。
悔しそうな顔をするシュナン。バックに切なそうな歌が。
これ以上兵士達を苦しめたくないと父に申し出るシュナン。そのために戦に早々に決着をつけなければならないという大公。
大公とシュナンとの間の話で、真王への不満が大公の口から出たのを廊下から聞いたヌガン、聞き捨てならないと大公に噛み付く。お前はこの国のことを何もわかっておらん、お前とは話もできぬわ、と席を立つ大公。
大公に物申そうとしたのをシュナンに止められ、嫌な顔をするヌガン。
何故止めたのかシュナンに聞くヌガン。シュナン「ヌガン、君は気づいていないだろう。ホロンもワジャクも、同じ人間だということを。」「そこに、この国のゆがみが生じているのだ。」「そして真王陛下もまた、我々と同じ、等しき人なのだ。」
ヌガン「血迷われたか、兄上。あろうことか、我らと、神々の子孫であらせられる真王陛下とが、等しき人であるなどと。」シュナン「ヌガン。私はこの国を正したいのだ。」ヌガン「必要ありません。今のあり方こそが、正しき国の姿。」シュナン「このままでは、この国は滅びる!」「その前に、私が変えてみせる。」
ヌガンの手を取ろうとするが拒否されるシュナン。
シュナン「分かれてしまった国を、武力を使わず一つにする。これが私の目指す未来。私の進むべき道だ。」
ヌガン「ならば俺も…己の心に従うまで。」と、剣を構える。剣を抜くシュナン。
戦いを始めるシュナンとヌガン。
シュナンの剣にヒビが。
ヌガンの剣を振り払うシュナン。
折れた剣をヌガンに突き立てるシュナン。剣が折れていなければヌガンはやられていた。
ヌガン、小さい頃一緒に植えた木を剣で切り倒す。
ヌガン「もう迷わぬ。」

時代のうねりは悲しくも、兄弟たちの行く道さえも分けてしまうのでした。
今、エリンの知らない場所で、世界が大きく動き出していました。