獣の奏者エリン

第21話 消えそうな光

エリンが幼獣の世話係になったことがクラスの話題に。広めたのはもちろんユーヤン。

エリンが幼獣の世話をまかされたという話は、カザルム学舎じゅうをかけめぐりました。

エリン(まだお母さんの胸の中に抱かれてる頃なのに、離れ離れになるのは辛いよね。)
トムラ先輩、どうして自分の代わりにエリンが幼獣の世話係になったのか解らない。
ティーナ(かわいい)、トムラ先輩から「王獣規範」という本を図書館に返すように渡される。
ユーヤン、エリンが飛び級で最上級生になったわけじゃないと知る。
自分の毛を食べる幼獣。
光を怖がる幼獣。
トムラ先輩「どうして俺から世話係を奪ったとたん、今までとやり方を変えるんだ?エサル先生への点数稼ぎか?」「お前は何かコネでもあるのか?それを利用して世話係になったんじゃないのか?俺は今まで、リランを一生懸命世話してきた。俺にとって大切な幼獣なんだ。もし、死なせることがあったら、俺はお前を許さんからな。忘れるな。」<ひどい言い様

その日からエリンは、寮にも戻らず、王獣舎で寝泊りすることにしました。
始めは警戒して、身食いをしていたリランも、エリンがいることに慣れるにつれて、次第に静かになりました。
リランを眺めるうちに、一日の過ごし方が判るようになって来ましたが、リランは、水以外は、一切口にしようとしませんでした。

エリン、食事抜きの日がつづいているらしい。
エリン(エサル先生は、獣はにおいで餌があると解るっておっしゃっていたけど、私だったら、においだけでそれを食べるのは…。)
初めて見る食べ物について、ソヨンが最初に食べてくれていたことを思い出すエリン。

リランが餌を食べてくれるように、エリンは寝る間も惜しんでリランのことを観察し続けました。

トムラ先輩「お前は、なぜそこまで王獣に対して熱心なんだ?飯もろくに食わずに、リランのことだけを考えて…。」エリン「私は幼い時に、突然母から引き離されました。」トムラ先輩「え?」<そりゃいきなりそんなこと言い出したらトムラ先輩びっくりしちゃうよ。
エリン「まだ、母親の翼の下にいる年頃なのに、突然引き離されて一人ぼっちになる…。リランは、あの時の私なんです。でも、私は、手を差し伸べてくれた人がいたから、生きることができたんです。私を育ててくれた人は、ハチ飼いでした。ハチ飼いは夏になると花を追って、人が足を踏み入れないような深い山に入ります。そこで私は大きな羽根を拾いました。」トムラ先輩「まさか、野生の王獣の!?」エリン「はい。その羽根を拾った瞬間から、私の王獣への興味が沸きだしました。そして、その山の峡谷の崖に、王獣の巣があったんです。王獣の母親は、甘えたような声で鳴く子供を大切そうに育てていて…。その様子は、人間の親子と変わりませんでした。私はリランに、こんな暗闇の中で縮こまってないで、お日様の光を浴びて欲しいんです。」トムラ先輩「もういい。お前の気持ちは解った。」
下から射す光がヒントになりそう。
エリン、王獣舎の壁をはがすことを提案。トムラ先輩「リランが窓からの光におびえるのは、光の当たり方が良くないからだとエリンが言うのです。母親の体の下にいた時のように、足元から差し込む光にすれば怖がらないだろうと。」
エサル、壁板をはがす許可を与える。
ヌックとモックが壁板をはがす仕事に。
壁板の下一枚だけをはがす。
リランが鳴いている。
それでもヤギ肉を食べないリラン。泣き出すエリン。
トムラ先輩「なんで泣いてるんだ?」エリン「リランは私に何かを伝えようとしたのに、それに応えられなかった…。」トムラ先輩「俺は、リランがあんな音を立てたことだけでも驚きだよ。」エリン「あれは鳴き声です。野生の王獣は、しょっちゅうあの音を立てていました。」トムラ先輩「あれが…鳴き声…?」
エリン「私にリランのことを教えてください!あなたは、リランが大切だといいましたよね?私もおんなじです!どうしてもあの子に元気になってほしいんです!」トムラ先輩「お前はよくやってるよ。俺から教えられることは、何もない…。」<トムラ先輩、さじ投げちゃったよ(^^;;
エリン(あの鳴き声…。母親もあの声で答えていた。私もあの声を出せたら、リランに応えられるのかもしれない。)
夜明けの鳥を歌い始めるエリン。

♪ならべ まくらの
 いとしき わが子
 こよいも ねむれ
 寝顔 いじらしい
 いとしき わが子
 こよいも ねむれ
 山は 遠く
 風は 遠く
 静かな 森で
 泣くのは おやめ
 話 聞かせて
 歌を 聞かせて
 こよいも ねむれ
 いとしき わが子

↑さすがにエリン歌上手いな
竪琴の音がヒントのようだ。
ユーヤン、寝言で「あかんで、カシュガン。あんたの気持ちはうれしいけどな…。」<www。しかも、頬が真っ赤になってるw
ユーヤンが寝てるのを起こして、二階の窓から入ってきて二階から出て行くエリンw
リランに竪琴で夜明けの鳥を聞かせるエリン。
うまくいかなかった。
王獣舎の下から光が差し込んだときにちょうど寝ていたエリンが落とした竪琴の音が。
立ち上がるリラン。
毛布で包んだ竪琴の音に鳴き声で答えるリラン。

毛布の中で響いた音が、母親のおなかの下で聞いた音に似ていたのだと、エリンは思いました。
そして、この音を正確に出せたなら、リランにもっと自分の思いを伝えられるのかもしれないと、思ったのでした。