獣の奏者エリン

第20話 リランという名の王獣

王獣について図書館で勉強するエリン。
王獣のふん集めの授業の時間なのに図書館で本を読んでいたエリン。
やっぱり王獣一直線。
トッサ「王獣は、普段はおとなしいが、興奮した時の暴れようはすさまじいんだね。王獣の世話は、命がけの仕事なんだね。だから、こうして頑丈な格子で厳重に人と王獣を隔てて作業をするんだね。」
獣舎の掃除とふん集めはとても大切。
音なし笛。吹いても音は聞こえないけど王獣を動けなくする。世話をするものは常に音なし笛を持って必要のある時に口に当てて吹く。
王獣は決して人に慣れない。13年前油断して王獣に近づきすぎた学童があっという間にかみ殺されたことがある。
音なし笛の音は大人の足で10歩のところまで届く。
ふん投げを始める生徒達。トッサ「まあ、年中行事みたいなものだね。」
ふんの様子を観察すれば動物の体のことが詳しく判る。
カミナリ雲が。
王獣はカミナリが鳴ると巣に戻る習性がある。
洗濯をしていたヌックとモックが王獣に追われてる。
ヌックとモックを助けるためにトムラ先輩が音なし笛を。
気絶している王獣。雨に打たれて涙を浮かべているように見える王獣を前にエリン「人に飼われた獣は哀れだわ。」「野生の王獣はあんなに美しく見えたのに、ここの王獣は…何かかわいそうに感じるのは、なぜだろう?」(お母さんも、こんな気持ちだったの?心が凍るような冷たい気持ち…。王獣の心をも殺してしまうような、そんな気持ち…。)
トムラとエサルで話。トムラ、エリンのことは賢いと思う。
幼獣の世話が上手くいっていないトムラ。いくら世話してもえさを食べてくれないし、何をしてもトムラに牙を向けてくるばかり。
王獣捕獲者以外、野生の王獣を見たものはほとんどいない。
エリンが野生の王獣を見たことがあると知ったエサル、エリンをトムラのところへ。
特滋水のにおい。
エリン、エサルから差し出されたものを見て、「もしこれが闘蛇用の特滋水と同じなら、アツネ草とラカル草の根を煎じたものに、トゲラ虫の体液を混ぜたものです。しかし、闘蛇用の特滋水と比べると、ラカル草の量が多い気がしますが。」
トムラ「闘蛇用?なぜそんなものを知っている?」
エサル「こっちはどう?何かわかる?」エリン「他の王獣のふんより、色が薄いし柔らかいです。1日分の量だとしたら、少なく思います。草の茎が少なく、代わりに体毛が混じっているのが気になります。」エサル「ちゃんとふんの観察をしていたようね。あなたに見せたい王獣がいるわ。」
エサル、エリンを幼獣のところに案内。
幼獣に対して音なし笛を使うエサル。
エサルに音なし笛を渡され、治療をしている間に幼獣が目覚めそうになったら吹く様に言われるエリン。
幼獣が身食いをしていたことに気づくエリン。
エリン「この幼獣は、怪我をしているからこんなにおびえているのですか?」エサル「いいえ、そうではないわ。この幼獣は、真王陛下の誕生日の祝いの献上品として捕まえられた王獣だったの。初めて人前に引き出されたその宴の庭で、音なし笛を吹かれて硬直している時に、背後から真王陛下を狙った矢に肩を射抜かれてしまったの。真王陛下のお命を奪おうとしたのは、サイガムルという集団だと言われているわ。彼らは、大公がこの国の王になることがふさわしいと思っているのよ。」
自分の境遇と幼獣とを重ね合わせて泣き出すエリン。エサル「エリン?あなたどうしたの?」エリン「何でもありません。この子がとてもかわいそうだったので…。」エサル「もっと冷静な子だと思っていたけれど、ずいぶん感情的な面もあるのね。あなたにこの幼獣の世話をさせようかと思ったけれど、やめたほうがいいかしらね。」
エリン「教導師長様、正確な判断は、冷静なだけではできないと思います。」エサル「何ですって?」エリン「距離を置いたら、感じられなくなることもあると思います。私は、この幼獣の気持ちが、誰よりも解るつもりです。」エサル「あなたは、共感することと、距離を置いて世話することの両方を行えるかしら?」エリン「判りません。でも、やってみたいです。」エサル「軽い気持ちで引き受けるなら、やめておいた方がいいわ。王獣も闘蛇も、この国の根幹に関わる獣よ。これらを扱うものは、その責任を負わなければならないのよ。」エリン「知っています。私は、闘蛇衆の娘でした。」エサル「それと、時間はあまりないわ。この幼獣は、傷を負ってから、全く物を食べていないの。」エリン「え?」エサル「あなたが世話をしても、このままの状態が続くようなら、いずれ死ぬわ。特滋水だけでも、飲んでくれればいいのだけど…。」
ソヨンに言われたことを思い出すエリン。闘蛇が特滋水を飲んで弱くなる部分について、エリンなら自分で答えを見つけられると言われたことがあった。
エリン「お願いがございます。私のやり方で、世話させていただけませんか?」エサル「あなたのやり方?」エリン「はい。そして、もし、野生の王獣のように、物を食べて、元気になったら、この幼獣の世話をさせてください。」
エサル「一つ、心に刻んでおきなさい。王獣は、決して人に慣れることはないわ。どんなに心を込めて世話しても、あなたに慣れることはない。あなたが特別だということは、絶対にないのよ。」エリン「はい。解っているつもりです。」
トムラ、1ヶ月だけ、幼獣の世話をエリンと交代することに。
トムラ、エリンに敵対心?
エリン、幼獣の名前がリランだということを知る。

古い言葉で、光という名を持つ幼獣、リラン。
エリンと同じように、母親と離れ離れになった幼獣との出会いは、その後のエリンの生涯を、大きく変える出来事になったのです。