獣の奏者エリン

第18話 教導師エサル

カザルムで、王獣の獣の医術師になりたい。
エリンは、そのための入舎の試しを受けるため、ジョウンとともにカザルム王獣保護場へとやって来ました。

保護場の外で待つ落ち着きの無いエリン。後ろにはなぜかヌックとモックが。
開かれた門の向こうにはエサルが。音なし笛を首にかけている。
エサル「14歳と聞いていたけど、16歳くらいに見えるわね。」ジョウン「ここ2年くらいで、急に大きくなった。」
ジョウン、日に焼けてずいぶんと変わったらしい。エサルはまったく変わらない。
学舎を案内されるジョウンとエリン。お付き(ヌックとモック)は別の所へ。
トッサ(先生)とウラリ(生徒)。アツネ草。授業中の生徒達のそばの廊下を通り過ぎる時に噂されるエリン。
庭に王獣が。
トムラ先輩とカシュガン。やっぱりエリンのことを特例の霧の民の娘と噂してる。
エサルが教導師長だった。びっくりしておならをするジョウン。もう2年も前からエサルが教導師長。
ジョウン「君は名誉や出世といったものに興味がないと思っていたが…。」
エサル「フフ。ここはタムユアンじゃないのよ。カザルムではね、教導師長は一生ここで過ごす。野心があったら務まらないわよ。」
エリン、教導師長の部屋の壁の本の数々に興味津々。
お茶を入れるエサル。侍女もいない。カザルムには教導師が10人と寮を世話する寮母が一人いるだけ。
エサル「必要以上の人出を雇うようなお金があれば、学童を一人でも多く受け入れるわ。」
お茶を入れるシーン、急須を離した後も茶碗の中のお茶が増えたように見えた(^^;
エサル「合否はともかく今夜はこの宿舎にお泊まりなさい。長旅で疲れているでしょうから、試しは明日にしてもいいけれど、どうする?」
エリン「もし、今から行っていただけるのなら、今の方がいいです。」
エサル「なら、そうしましょう。でも、まずはお茶を飲みなさい。落ち着くわよ。」
カリムの実の皮で作ったお茶。おいしいらしい。
エリン「カリムの?!あの硬い皮を干して作るんですか?」
キノコの部位の名称を答える問題やら、鳥の骨の部位の名称を答える問題やら。筆で書かないといけない。
時間は1ト。<1トってどれくらい?とりあえず砂時計で時間を計っているみたいだが。
お茶を飲みながら試験を受けているエリンを見るジョウン。
エサル「あなたからの手紙には驚かされたわ。娘をここに入れたいなんて。」ジョウン「すまんな。」エサル「そこじゃないわ。あなたに娘がいたなんて、聞いたことがなかったから…。」ジョウン「まあ…、いろいろあってな…。」エサル「二度と山を下りてこないと思っていたのに…。」ジョウン「そのつもりだったさ。だがな…。」
エリン、問題を解き終わる。
エサル「まだ半トしか過ぎていないわよ。」エリン「え?そうなんですか?」エサル「もういいの?」エリン「はい。」
解かれた問題を見るエサル。ジョウンを見るエリン。両手をひろげて判らないような素振りをするジョウン。
エサル「なるほど。あなたの秘蔵っ子のはずね。」ジョウン「どうだい?」エサル「そうね…。」
ベルを鳴らして寮母のカリサを呼ぶエサル。60人の学童たちの母親代わりをしている。
カリサに、エリンを寮の部屋に案内するよう言うエサル。中等2段に編入することに。
カリサ「あら!2年飛び級!そりゃ優秀だわ。」
エサル「学業は初等組ではなく、あなたの年齢通りの中等2段に入っていいわ。ただし、実習は12歳の学童達と一緒に、王獣と家畜のフン集めから始めなさい。いい?」エリン「は…い…。ありがとうございます!」
エサル「夕食の時にでも、学童仲間たちに引き合わせるわ。」エリン「はい。よろしくお願いします!」カリサ「まあ、学童ってより、悪童って連中ですけどね。」<いやな予感が
カリサ「カリサです。よろしくおねがいしますよ。」エリン「エリンと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」カリサ「あらまあ!きちんとしたあいさつだこと。やっぱり女の子は気が回っていいわねえ。」<他の連中の程度が(^^;
カリサ「ねえ、教導師長様。だらしない学童連中よりも、女の学童を増やしましょうよ。」エサル「フフ。考えておきましょ。」
客間を用意されるジョウン。
カリサ「あっ、そうそう!あなたたちのお付きの、デッコボコの2人はどうします?」エリン「デッコボコって…?」ジョウン「あの2人か…。おれと一緒に帰るだろう。とりあえず、納屋でもなんでもいい。貸してやってくれんかね?」<扱いがひどい(^^;
部屋に案内される前に、ジョウンがまだいることを確認するエリン。
ヌックとモック、エリンから合格したことを知らされる。
カシュガンとトムラ、エリンとヌックとモックの会話を聞いてエリンが受かったことについて話す。
エリンの答案用紙を見せられるジョウン。
エサル「30年、教導師をやってきたから、優秀な学童はたくさん見てきたわ。だから、小さな計算間違い一つで後は全問正解であっても、大して驚きはしない。でもね、あの子の書いたその作文には、正直驚いたわ。『なぜ、獣の医術師になりたいのか。』『自分はこの世に生きるものが、なぜこのようにあるのかを、知りたいのです。生き物であれ、命なきものであれ、この世にあるものが、なぜ、そのようにあるのか、自分は不思議でなりません。私はミツバチを飼育していました。ミツバチ一つ一つはとても小さな生き物です。ですが、小さなミツバチたちは、群れを作って生活を営み、子供を残すという事において、信じられないくらいに効率が良い方法を取るのです。その一つが、分ぽうなのです。ハチを例に取りましたが、王獣や人間というものがどうして存在するのか、そして、自分を含め、生き物はなぜここにあるのかを、知りたいのです。獣について学ぶことは、きっと、自分が知りたいと思っていることについて、つながっているはずだと思うのです。私が獣の医術師になりたい理由は、以上です。』」
エサル「あなたは根っからの教導師なのね。学舎を離れたはずなのに、優秀な子を見つけたら育てたくなるなんて…。」ジョウン「う〜ん…。そうじゃない。私が見出したわけじゃない。」エサル「あなたが手紙に書いていたことで、おおよそのことは判っているつもりよ。入舎の試しに受かった以上、ここにいる私の生徒の一人に変わりはないわ。」ジョウン「それだけではないんだ。エリンは、実は闘蛇衆の娘でな。」エサル「闘蛇衆の?」ジョウン「ああ。エリンの母親は、闘蛇を死なせてしまったことを理由に、闘蛇に食い殺されるという処刑を受けて、死んだのだそうだ。」エサル「そう…。そういう経緯のある子なのね。14とは思えない静けさがあるのは、そういうことがあったからなのでしょうね。母親は戒律を破ったアオーロウ。あの子の目を見れば、一目で霧の民だと判るわね。」ジョウン「あ…、あ〜。」エサル「心配しないで。ここの者達には、学童にも、エリンがこの学舎に入ることが決まった場合、彼女の母親が霧の民だったことは一切無視するように厳しく言ってあるから。」ジョウン「あ〜、すまんな。」エサル「アーリョでも、ワジャクでも、ホロンであっても、身分が低くても、女でも…。獣を助けたいという心があって、それをなせるだけの頭があれば、この学舎の一員として、何の不足もないわ。」
エリンの部屋になる部屋。もう一人女の子(ユーヤン)がいる。他の学童はみんな男だから、別の寮の大部屋で寝泊りしている。エリンとユーヤンだけ特別。
カリサが出て行って窓から景色を眺めるエリン。ユーヤンが入ってきた。
ユーヤン「あ…、あんたがエリン?」「わ〜、ホンマや。目が緑色。あんた、ホンマに霧の民なん?」「きれいな目やなぁ。あ、そうそう。お近づきの印に、お菓子食べる?」「遠慮せんでええって。なんも後から『お金よこせ』とか言わへんから。」「エリンちゅうと、山リンゴやね。あれ、めっちゃうまいんよ。うち、あれを焼き菓子にして、ハチミツかけて食べるのめっちゃ好きなんや。トロ〜っとして、モフ〜っとして。なあ、そう思わへん?」「あ〜!あんた、うちのこと変やと思ってる?」「あ〜、また、やってもうた!うち、こんな性格やろ?そやから、おとなしくしときってエサル先生にも釘さされとったのに…。は〜。」<なぜ関西弁?
ユーヤン「こらまあ、ご丁寧に。こっちのほうこそ、よろしくやん。」<よろしくやん、って言葉初めて聞いた。
夕食の時間に。
カリサ、フライパンを杓子で叩く。<やっぱり定番w
みんなエリンがかわいいので見てる。
エサルによると、ユーヤンは誰にも気兼ねさせないいい性格の子らしい。
ジョウン、安心する。
エリン、寝ているベッドから起き上がってふと外を見ると、荷造りするジョウンたちが。
エリン、ジョウンのところへ。
エリン「おじさん…。今まで、ありがとうございました。」ジョウン「おれの方こそ、ありがとうだ。」
涙を流すエリン。ジョウンのオナラのせいで雰囲気台無しw聞き納めw
ヌックとモック、ただ働きでいいからと泣きついて、カザルムに残って寮母さんを手伝うことに。
ヌック「俺たちは、じょうちゃんと離れねえからな!」モック「ずっと一緒だもん!」<軽いストーカーじゃないか?w
朝日が。
ジョウン「元気でやれよ。」「困ったことがあったら…、いや、お前のことだから、そんなことはないだろうが…。今日から、エサルがお前の親だと思って、困らせてやれ。」「それじゃあな。」
エリン「お元気で。」「おじさん…。」
涙を流すがこらえようとするエリン。
ジョウン「ああ。」
カザルムを馬車で去るジョウン。
涙を浮かべるジョウン「エリン…。お前は、俺の自慢の娘だ。」

馬車が去るのを見送りながら、エリンは、ジョウンとの幸せな暮らしを思い出していました。
そして、このカザルム王獣保護場で、エリンの新しい暮らしが始まったのです。