獣の奏者エリン

視聴一日遅れ。

第9話 ハチミツとエリン

起きて蜂の羽音に気づいたエリン。
エリンがいびきしていると冗談を言うジョウン。

エリンは、闘蛇の背に乗せられ、はるか西の地へと流され、真王領の東の端にある湖で気を失っている所を、ジョウンというハチ飼いに拾われたのです。

馬のトッチと羊のノロを飼っているジョウン。
ミツバチがジョウンのお宝。
防具もせずに蜂の巣箱を開けようとしてジョウンに怒られるエリン。「おい、こら!そんななりのまま近づいたら、いくらなんでも責任持てんぞ!」
取れたてのハチミツに飛びっきりの笑顔のエリン。
ジョウン「取れたてのハチミツは俺の美しさの秘訣だ。ハハハハ。」
ハチミツと花の蜜の味が違うことに気づいて、ジョウンに「お?なかなか目の付け所がいいな。」といわれるエリン。
ジョウン「では、ハチミツというのは何だろうな?」
エリン「ミツバチは、花の蜜を飲んで巣に帰って、一度吐き出すんだから、ハチのつばが混じってるのかと思ったんだけど…。」
ジョウン「なるほど。いい線だ。」
エリン「でも、ミツバチはすごく小さいでしょ。そのミツバチが、このうす〜い花の蜜をそんなにトロっとさせるくらいつばを吐き出してしまったら、体が縮んじゃわないかしら?」
ジョウン「よ〜し。仕事が済んだら、ハチのことをちゃんと教えてやろう。」

その日から、ジョウンは、おりをみて、エリンにミツバチのことを教えてくれました。名前も知らなかった花の名前や、その花粉が、甘くてとてもおいしいことも教えてくれました。

ジョウンがエリンの前でふんどし一丁(^^;;

なにより、ここでの暮らしは、アケ村とは勝手の違うことばかり。毎日が驚きの連続でした。何か新しいことを発見し、それを不思議に思ったり、どうしてなのかを考えたりする度に、エリンの心は高鳴るのでした。

分ぽう。
ジョウン「女王様は群れが大きくなりすぎると、半分ぐらいの働きバチを率いて巣を飛び立つのさ。これを、分ぽうというんだ。」<へぇ
エリン「生き物に異変があるときは、まず巣に変化が起こるって教えてもらったことがあったから。」
噴霧器を知っているエリンにジョウンびっくり。ソヨンが使っていた。
分ぽうしたハチたちを空の巣箱に誘い込む。

その時、エリンは、ある光景を思い出しました。ルルを初めて池に入れる時、大人たちが、前にその池に棲んでいた闘蛇の粘液を、ルルの体に吹き付けていたのです。

エリン「おじさん。それって、におい消しのためですか?」
ジョウン「あ…、なぜそう思った?」
エリン「その液を使うのは、何かのにおいを消して、『だいじょうぶだよ』って教えるためじゃないのかなと思って。」
ジョウン「正解だ。こりゃ驚いたな。」
ジョウン「実はな、この巣箱に天敵の毒ガエルが入っちまったんだ。一応洗って干してはあるんだが、ミツバチたちは、においに敏感だからな。前の家で、何か生き物でも飼っていたのか?」
前の家のことを聞いてエリンが暗い顔をしたのでこりゃしまったなという素振りをするジョウン。
ハチが止まっていた木の枝を切り落とすジョウン。<何の意味が?
ハチの巣箱に近づくなとジョウンに言われているのに、ジョウンが飯の支度をしている間に近づいてしまうエリン。また怒られる。
ジョウン「まったく。思ってた以上にずぶといな、お前は。」
働きバチはみんな雌だが卵は産まない。女王蜂がたった一人で何万もの卵を産む。
ハチの乳。タブチム。<ローヤルゼリーのことらしい。
タブチムをちょっと飲んじゃったので心配なエリン。
ジョウン、冗談が好きだな。
タブチムとみかんの汁を混ぜたものをエリンが怪我をしている間に飲ましていたジョウン。なんとそれだけで小粒銀一枚。

小粒銀一枚とは、お祭りのような特別な時に食べる上等な牛の肉を、大人の拳三つ分は買えるほどの、高価なものでした。

エリン「おじさん。」「おじさん…私、お金持ってません。」
びくびくして涙目のエリン。
ジョウン「こいつは俺が悪かった。考えなしに余計なことを言ったな。俺はな、お前から金を取ろうなんて思っちゃいない。な〜に、心配するな。かわいいハチたちがせっせとミツを集めてくれりゃうちは安泰だ。お前みたいな子供一人、面倒見るぐらい、屁でもない。」

ジョウンにやさしい言葉をかけてもらっても、エリンの心は楽にはなりませんでした。エリンには、家族でない人に、タダで甘えることが、心苦しく思えてなりませんでした。もし、ここにおいてもらえなくなったら…。お母さんを失って、もうどこにも居場所がないんだという心細さが、エリンの胸に冷たくこみ上げてきました。

ジョウン「分ぽうってのは、女王が自分の生きてきた場所を子に残していくんだな。その場所で、わが子が生きていけるように。いつかまたその子が旅立てるようにとな。」
エリン「おじさん、私は…帰る家が…ありません。お金も持ってません。でも、私は料理が出来ます。上手じゃないけど…縫い物もできます。トッチとノロの世話もします。一生懸命働きます。お願いです。ここにおいてください!」<涙を流して三つ指付いて嫁入りみたいだ(^^;;
ジョウン「旅に出て…子供が一日宿屋に泊まるのにいくら取られるか知ってるか?」「それじゃ、下働きで雇われた子供の一日の稼ぎがどれぐらいか知ってるか?」「どちらもだいたい、銅50枚ぐらいだ。だからお前が、この家の家事を引き受けてくれると言うなら、ちょうどとんとんだ。どうだ、この取り引きは?」
取り引き成立。
ジョウン、エリンの名前を知らなかった?
エリン「エリンです!」
ジョウン「エリン。山リンゴのことだな。小ぶりだが、赤くて愛嬌がある。お前にぴったりの名だ。俺はジョウンだ。蜂飼いのな。」
ジョウンも、今まで名乗ってなかったらしい。

エリンは決めたのでした。このミツバチたちのように、お母さんが残してくれたこの世界で、自分も精一杯強く生きて行こうと。